さてさて気がつけばほぼ1ヶ月ぶりの更新。
毎年炎天下で暑い暑い言いながらも色んなイベントを楽しんでいた8月。もちろん今年もそのように過ごすはずだった。
しかし、何もない。本当に何も。
仕事以外は本当に不要不急の外出をしていないので休日はほとんど家の中で過ごす。下手したら外より暑いんじゃないかという僕の部屋。湿度は香港、台湾並みだ、きっと。
というのも僕の部屋にはクーラーがないのだ。そりゃあ暑いに決まってる。
しかし問題はそこじゃあない。クーラーがあって温度的には快適な中でも長引く巣篭もり生活にいいかげん辟易しているのは皆同じだろう。
そこで今回は林強の『盒子內的時間』を歌ってみました。
前回の『HAPPY BIRTHDAY』に続いて林強の3rdアルバム『娛樂世界』から、1曲目に収録されている曲です。
オープニングにしてフェードインから始まるこの曲は曲調こそゆったりしていますが、シンセ+打ち込みのリズム、そこに歪んだギターというアルバム全体を形作っている近未来感に溢れたサウンドは初めて聴いた時からワクワクさせられました。ここから「娯楽世界」への旅が始まるのだ。
「盒子內的時間」。日本語で言うと「盒子」=箱、つまり「箱の中の時間」。
今回も日本語版ライナーノーツから林強のコメントと歌詞、対訳を引用。
この曲はとてもパースナル(原文ママ)なものだ。家にいるとき、一人で音楽をやっているとき、いろんな感情が交錯する。だから、こんなサウンドになったんだ。ちょうど一人で箱の中にいるみたいな感じ。箱=部屋。
どーですか、お客さんッ!!まさに今のステイホームにぴったりではないですか。
我々はステイホームという大義名分のもと、箱の中に閉じ込められているのだ。
続いて歌詞。
盒子內的時間詞:林強 曲:林強時間被關在流動的空氣中時間は流れる空気に閉じ込められる風聲鑽過窗縫牽成一條圈圓的旋渦風の音が窓の隙間を通って 一本の円形の渦巻に連なる冰冷畏寒無色彩的光束冷たくて寒いような色彩のない光の束が盒子內縮成一團形體箱の中で縮まってひとつの形を作る在空中飄浮塵土的精華空中を漂う埃のエッセンスが光影不定慢速進行光も影も定まらずに ゆっくり進んでゆくOh! Oh! Oh! Oh! Oh! Oh! Oh!
単なるポップス歌手として消費されるのを嫌い、自身が理想とする音楽を模索し続けていた林強。
しかもソロミュージシャンである彼は部屋の中で孤独と闘いながらの創作だったのでしょう。
当時からすると斬新すぎるサウンドにそんな心情を乗せた歌を最初に持ってきた、名刺代わりというか、ある種の宣言とも感じられるのです。
(ちなみに、これはまた別の機会に書きたいが、アルバムラストの曲が『逃脫』=エスケープというのも暗示的である)
今はZOOMを使ってオンライン会議とかオンライン飲み会をしたり、部屋に篭りながら外の世界とリアルタイムで繋がれる。
でもそれはやはり「箱の中」にある一人きりがもたらす「自由」と同等の「孤独」から逃れたいから?
そんな時はこの歌のように孤独と向き合い、部屋に流れる空気を眺めてみるのもいいかも知れません。