これぞポップ!baboo

黑名單工作室でゲストボーカルとして存在感を示した林暐哲が1991年に結成したbaboo(所によって表記の大文字小文字がバラバラなので本文ではbabooと書きます)。

 
林暐哲がフロントマンとしてボーカル、ギターetcを務め、キーボード・李欣芸、ドラム・李守信、そしてベースに日本人の金木義則という四人編成のバンドです。
メンバーがそれぞれ音楽学校出身というエリート集団。
 
1992年に発表したアルバム『新台幣』はそれを証明するかの様にロックに限らず、フォークや民族音楽など様々なジャンルを高い演奏力でポップに仕上げています。

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新台幣(台湾盤)

新台幣(台湾盤)

  • アーティスト:BABOO
  • 出版社/メーカー: ロックレコード
  • 発売日: 1998/04/16
  • メディア: CD
 

 

CDの帯に書かれている文章を一部抜粋。
 
BABOO是音樂風格獨特的本土樂團
(訳:BABOOとは独特な音楽スタイルの台湾バンド)
 
BABOO是多種口味混合的冰淇淋
(BABOOとは色んな味がミックスされたアイスクリーム)
 
BABOO是多種語言混合的什錦語言湯
(BABOOとは色んな言語が合わさった五目言語スープ)
 
BABOO是多種樂風混合的什錦音樂湯
(BABOOとは色んな音楽性が合わさった五目音楽スープ)

 

と、本人サイドから明解にアピールされている様に音楽的な部分以外にも國語、台語、英語、プノン族の言葉まで使用する、多芸多才バンドなのです。
 
ジャケなどの写真を見ても全員カラフルな衣装を着ていてヴィジュアルからしてポップ感満載。

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しかし、歌われている内容は表題曲『新台幣是一尾魚』ではニュー台湾ドルを、『耗子搬家了』では世界一有名なネズミを引き合いに出してアメリカを皮肉ったりと、“黑名單イズム”はここでも盛り込まれています。
 
そして林暐哲の台語ラップはやはり欠かせず、早口ラップも披露していて一層の進化も。
 
大半の曲を書いている林暐哲のメロディラインは決してキャッチーなものばかりではないのにも関わらずバックがそれを上手く聴きやすくしていて、これだけ独創性、音楽性に溢れかつキャッチーなバンドはなかなかないと思う。特に当時の台湾でこんなアルバムが作られていたという事実。
 
僕はbabooの事は以前紹介したミニコミ誌『電影風雲』のスピンオフ『台湾風雲』で知りました。
その中で、現地でカセットテープをジャケ買いした著者の方が実際に聴いてみて衝撃を受け、CDで買うべきだったとの熱い文面で紹介されていたのを読んでいたので、その後台湾に行った時にちゃんとCDで購入した(笑)のを今でも持ち続けている訳です。(カセットとか、エピソードが昔!)
何年か前に中国語ポップスのCDを断捨離の名の下に大幅処分した(今となっては猛烈に後悔)のですが、さすがにこれは手放せなかった。
それくらい台湾音楽史にも、自分にとっても重要な一枚。
 
この様に華麗なる登場を果たしたbabooですが、バンド名義で映画のサントラに楽曲提供をしたりするもオリジナル音源はこのアルバム一枚のみを残し1993年に解散してしまう。なぜだ・・・。
(YouTubeには2005年にbabooとして台客搖滾演唱會というイベントに出演している動画があるあたりネームバリューを感じさせる)
 
もともと色んなアーティストの製作に関わっていたメンバー達はその後もミュージシャンやプロデュースなどで音楽には携わっている様で、特に林暐哲は今や自身のレーベルを立ち上げ、名プロデューサーとして後進を育てている様です。
 
日本人の金木義則さんも台湾で音楽活動を続けておられます。
ブログを発見。2018年で更新が止まっていますが、たまにでいいので是非長きに渡って台湾音楽界を見てきた日本人として貴重なお話をたくさん聞かせて欲しいものです。