ミュージシャン・所ジョージ と、香港。

日本テレビで放送されている中居正広の『新・日本男児と中居』という番組が好きで毎週観ている。

 
内容は旧来の価値観が崩壊しつつある現在、新価値観で生きる男にクローズアップして話を聞くというもので、中でもシリーズ化しているのが“新カリスマ”に心酔しライフスタイルを真似ている人物を招くという企画。
 
これまで菅田将暉、米津玄師、ローランドなど、見た目や考え方などをコピーすることで今までの自分を脱却することが出来たという成功体験を紹介するのであるが、正直なんだか見ているこっちの方が背中がむず痒くなるような感じに毎回なってしまう。(番組側にもイジる方向性あり)
まぁ、私も人に憧れやすいところはあるので気持ちは解るんですけどね。
 
しかし、さる11月30日の放送ではスダラー、米津ラー、ローランドラーに続いて、所ジョージを崇拝する「所ジョージラー」なる人物が登場!
てか、「所ジョージラー」って既にあるクラスタの様に言ってたけど本当??
 
スタジオに登場したのは19歳の、「ジョージラー」歴11ヶ月という若者でしたが、かくいう私も昔から所さんに関しては崇拝している一人。「ジョージラー」とまではいきませんが。
 
私は所さんのスゴさはクリエイティビティにあると思っている。
 
ライフスタイルやテレビでの立ち振る舞いなどでの色んな意味での軽快さもいいが、ご本人が「発表ごとのない芸能人は引退すべき」と言っているだけにテレビ以外でも常に創作物を生み出し続けているのである。
 
その代表的なのが著書。
古本屋に行けば何かしらの著作物が目に入るくらい著書多数な所さん。最近は雑誌『Daytona』や『世田谷ベース』の定期刊行物が中心で単行本はかなりペースダウンしている様ですが、以前は今のホリエモン並みに本を出していた。
 
昔は特に童話みたいなのも多かったが、直接的に所イズムを感じるならやはりエッセイだろう。
語り口や思考は独特ながら実に真面目に心に刺さる様な、所流自己啓発的な内容の本は割と多い。
 
全作ではないが、本棚には珠玉の名著たちが並んでおります。

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次に、なんと言っても僕にとっての所さんは“ミュージシャン”。これは揺るがない。
 
第一、キャリアのスタートは宇崎竜童のライブの前座だったわけだし、ご自身も度々「巷では司会者とか芸人とか言われているみたいですけどワタシはフォーク歌手」といった旨の発言をしている。(その後にはだいたい「私のレコードは滅多に売れない」という内容の文言も付く)
 
売れない、という割に長年コンスタントにCDをリリースし続けていましたが、現在では自主レーベル「Jam Cracker Record」を設立。より自由な(CDと歌詞カード別売りなど。笑)音楽活動の基盤を作っています。
 
そしてYouTubeで毎日のように動画を配信、「最近の歌」と題したギター弾き語りで多くの曲を聞くことが出来る。
時事や社会的に風刺のきいた歌も多いです。
 
個人的にはテレビのタイアップも多く、レコード会社の意向が大きく働いている感のある(私感)VAP時代が結構お気に入り。いい曲多いです。
 
最近の所さんは以前のように地上波では深夜番組で自分のカラーを出した番組をしたりせず、ゴールデンでの司会業が中心になっていて、そういう番組はBSの「世田谷ベース」でやるなど、YouTube然りきちんと時代の流れに活動をアジャストしている。
 
しかし、所さんが音楽を奏でなかったことはないのである。バラエティに出ても事あるごとにギターを抱えていた姿を見たことのある人も多いだろう。ROLLYがどこへ出てもギターを弾きたがるのと同じである。(多分)
 
⬜︎⬛︎  所ジョージが歌う「香港」⬜︎⬛︎
  
このブログは中華圏に関する話題が今のところ中心ながらも、そこにこだわることなく自分の好きな音楽についても語る場という認識でいますがさすがは所さん。実はこんなアルバムも出しているのです。
 
それが1979年発売の5th『Revenge Of Hong Kong ホング・コングの逆襲』。

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ホング・コングの逆襲<生産限定紙ジャケ復刻>

ホング・コングの逆襲<生産限定紙ジャケ復刻>

  • アーティスト:所ジョージ
  • 出版社/メーカー: PONYCANYON INC.(PC)(M)
  • 発売日: 2009/02/18
  • メディア: CD
 
 
タイトルはもちろん『キングコングの逆襲』から。そしてホング・コングとは香港。
アルバムレコーディングを香港でおこなっており、ジャケット裏にはその様子を収めた写真が羅列されている。

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この年に公開された山本晋也監督『下落合焼とりムービー』の主題歌『TOKYOナイト&デイ』、カップリングの『Summer Come Back To Me』他、日本でレコーディングされたと思しき一部を除いた曲にはアレンジに中国の民族音楽を素直かつ大胆に取り入れており、香港でのレコーディングという意義を大いに感じさせる、ほぼほぼコンセプトアルバムとなっている。
 
このアルバムといえば『スブタ』に代表される、数十秒前後の短い曲が多数収録されていることでも知られている(『スブタ』は6秒)が、それらも中国音楽アレンジ。
 
まず冒頭『プロローグ』では香港に向かう飛行機の機内アナウンス(キャセイ航空)から始まり、所さんが今でもネタにしている『雪だるま』のインストへ。
 
そして2曲めアルバムタイトル曲でもある『Revenge Of Hong Kong』でいきなりかます。
バックのパーカッション以外はベースとマリンバのみという音数の少なさ。
 
もうたまらず当ブログで何度も登場している細野晴臣の“トロピカル三部作”を想起せずにいられない。
ベースとマリンバ!星野源もきっと興奮するに違いない。
 
他にも『チャイニーズ・ホテル・ブルース』のアレンジも素晴らしいし、赤塚不二夫作詞の言語センスには舌を巻く。
ちなみにアレンジは一部を除いてクニ河内。
 
中でも極め付けは『中国民話・白蟹傳(パコ・ハイ・チャン)』。
ハイハット裏打ちディスコビートの曲であるが、ギター、ホーンセクションに対してストリングスが二胡!!ソウルミュージックと中国民族楽器の見事な融合。
ちなみにこの曲の作詞は高平哲郎。他にも先述の赤塚不二夫や山本晋也監督、滝大作など“面白グループ”(タモリもメンバーだったクリエイター集団)総出で作品に関わっている。
 
ラストは『エピローグ/雪だるま(雪不倒翁)』。『雪だるま』の広東語バージョンで締めくくる。
 
という訳で元来の所さんのフォークシンガー感は控えめであるものの音楽的にも聴きごたえに余りある大傑作。マジで細野さんのトロピカル三部作に通じるものがあると思う。地声に近い歌い方も両者に共通しているし。蛇足ながら『ファンキー・モンキー・マジック』に「Tutty Frutty」というワードが歌詞にあって無理矢理つながりを感じている。笑
 
それにしても所さんはその後も『ホテル・チャイナタウン』『ブルーライト・チャイナタウン』という曲を歌うのだが、ミスドが飲茶をやっていた時のCMで人民服のような衣装を着ていたり、何かと中華づいているのは何故だろう。
 
テレビで歌う時はコミカルなものが多いので所さんの曲はコミックソングばかりだと思っている方は一枚でもアルバム聴けばすぐに分かると思う。
坂崎幸之助さんが言うまでもなく「所さんは天才だ」と。