K-POP前夜 〜ソ・テジのススメ〜

前の記事でソテジソテジ言い過ぎたのでせっかくならと今回はソテジについて。

 
ソテジ。丁寧に言えばソ・テジ。ソが苗字でテジが名前です。まぁ、本名ではないんですが。
 
フジテレビ『アジアNビート』ではアジア各国の音楽が一緒くたに紹介されたのであるが、僕自身は中国語を勉強していたので中華圏以外は正直範疇外だった訳で、番組内で流れるPVを眺めている程度だったのが、“ソテジワアイドゥル”は違った。
当時からCDを購入し、現在に至るまで愛聴している。中華圏でさえそんなアーティスト少ないのに、である。
 
ソテジワアイドゥル。日本語にすると「ソテジと少年たち」。英語では「Seo Taiji and Boys」。
 
ソテジをリーダーとして、今ならEXILEファミリーにいそうなルックスのダンサー、イ・ジュノと、BIGBANGやBLACKPINKなどを世に送り出すも今やすっかり黒い芸能プロ社長として日本でも連日ネットニュースを賑わすことになるヤン・ヒョンソクの三人からなるユニットである。
 
『アジアNビート』で最初にランキングとして流れたのは『何如歌(ハヨガ)』だったと思う。
韓国初のラップ音楽でのヒットという事でBボーイファッションの三人組がダンスをしながら歌っていた。
 
僕は特にヒップホップが好きという訳ではなかったが、なんかカッコいいというか、単純に曲がいいなと思ってCDを買ったと記憶している。
 
ソテジは元々十代の頃からヘヴィメタバンド“シナウィ”でベーシストとして活動していた経歴があり、ソテジワアイドゥルの初期こそラップを主体としたダンスミュージックを歌う、イマ風にいうとダンス&ボーカルユニットであったが、ソテジが違うのは彼自身が楽曲も制作しているという点である。
 
『何如歌(ハヨガ)』は2ndアルバム(韓国式に言うと2集)収録の表題曲であるが、ラップのバックでは重めのギターが鳴っていて、韓国の民族音楽の音も相まって立派なミクスチャーロックになっている。
 
そして続く3集では自らの音楽性をストレートに叩き込んだ。バラード曲はあれど、ほぼほぼ全編メタル、ラウドロックのアルバムになっちゃった!
ライブ映像を見たらバックバンドが完全にそっち系の人で、デスボイスでがなり立てたりしている。でも名曲揃い。
 
さらに4集になると短髪に金縁メガネというそれまでの爽やかなアイドルっぽい風貌からサングラスにロン毛、カラフルで奇抜な衣装を着たビジュアルへと変貌を遂げる。(他の二人はさほど変化なし)
 
音楽的にはメタル要素はやや薄れるも、ミクスチャー、オルタナティブと音楽的な幅が広がっている。
ジャケットのイメージ通り、全体的には暗い印象を受ける。
『必勝』での甲高い声でシャウトしまくるソテジの狂気が象徴的。
 
しかしテレビ出演時の歌唱映像などを見ると、曲調もどんよりで歌詞もポジティブではない内容のラップ曲『Come Back Home』ですら観客の女子たちの黄色い大合唱の声が本人達を超える音量で聞こえてくる。もう何を歌っていようが関係なしなくらいの人気だったのだろう。てか、ラップも一緒に歌っちゃう韓国女子ファン恐るべし。
 
ちなみに僕自身はユニット時代のアルバムでは断然この4集を推す。未だに事あるごとに聴くくらい好き。全く飽きないんですよ、これが。
一つ欠点があるとしたら『時代遺憾(シデヨガム)』が発表時、検閲により歌詞にケチが付いてオケのみのインストとして収録されている事。
 
ユニット解散後ボーカル入りでシングルとして発売されたのであるが、僕は当時4集のインストバージョンとこのボーカルバージョンを差し替えてセットリストを作って聴いていた。
 
歌詞でいうと、これまた解散後に出された『Goodbye Best Album』では一部の曲に「ピー音」が入るという不可解さ。ポピュラー音楽でピーが入るって聴いた事ない。ならば何故収録したんだ。笑
ちなみにこの二枚が出た後検閲制度が廃止。
 
韓国音楽界でラップを取り入れた第一人者、ミュージシャンとして初めて?半ズボンを履いてテレビに出たなどその他にもエポックメイカー的なエピソードに事欠かず、「文化大統領」との異名を取ったソテジであるが、加熱するばかりの人気がプレッシャーとなり4年間の活動に終止符を打ち、渡米。
 
他の二人も表舞台から去り、プロデュース業へ。ヤン・ヒョンソクは今や・・・(以下略)。
 
ところが2年後、ソテジはソロで復活。以降非常にマイペースにアルバムをリリース。
復帰直後はロン毛、パーマ、ドレッドにグラサンと更にビジュアルが変化。音楽的にも更にラウド化が進み重いサウンドが中心。
あの可愛かったソテジが・・・。
 
でもボーカルはデスボイスのように太く歌う曲もありながらソテジらしい優しい声で歌う曲もありで路線変更というよりはユニット時代からの進化が続いていると感じる。
 
ただ現段階での最新8集がリリースされたのが2009年・・・。今までで一番期間が空いてしまっているよ・・・。
 
ちなみに収録曲の『HUMAN DREAM』はピコピコサウンドにすっかりアイドル時代に戻ったかのようにダンスを披露していて、大人になって丸くなったなぁ、と思って歌詞の対訳を見たらあんなに明るい曲調なのに悲しい内容で、ソテジらしいと思うと同時に、あぁこの人の傷が癒える日は来るのだろうか・・・と涙が出てしまった。
 
2017年にはデビュー25周年を記念して防弾少年団はじめ様々なアーティストがソテジの曲をリメイクという形で歌い継ぐという企画があったり、他にも色んな人にソテジの楽曲がカバーされていてしっかりと“K-POP”界においても影響力を示している。
 
僕が見た中ではSHINeeが歌う先述の『時代遺憾』は原曲にアレンジが近く、彼らもカッコよくてお気に入り。
 
あとガールズグループのDREAMCATCHERも『時代遺憾』をカバーしているのをYouTubeで発見。これも原曲のイメージを守りつつダンサブルに歌いこなしていてなかなか良い。
 
これだけ韓国の音楽が当たり前に日本でも聴かれている今でも僕自身は申し訳ないことにソテジしか知らないレベルでK-POPは素人ですが、いつの日か新大久保で韓国好きの女子がチーズハットグ食べながら「ソテジってヤバいよねー」と会話する日が来るのを願っている(ただの妄想)。
 
 
では最後に、またまた古い蔵書から一冊ご紹介。
 
『ノレバンへ行こう KOREAN POPSの現在 1996版』一ノ橋海甲 (レンガ書房新社)

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K-POPじゃなくて、KOREAN POPS。
1996年版と表紙にありますが、本文を読むとソテジが4集を出した直後のタイミング。
(レビューの「本物のアルバムがレコード店に並ぶ前に海賊テープが屋台で売られる」というキラーフレーズ!)
 
韓国音楽シーン解説や当時のトップシンガー紹介やディスクガイド、KBS歌謡TOP10の歴代受賞曲リスト等々、資料性高く韓国愛溢れる内容。
キム・ゴンモ、カン・スジなど『アジアNビート』でも紹介された数々のアーティストも多く掲載されている。
 
「ノレバン」とは韓国のカラオケボックスで、この本のメインはアーティスト紹介とともに1曲ないし2曲の歌詞がハングルにカタカナルビ、対訳付きで載っている、歌本的な内容となっている。これで歌詞を覚えて「ノレバン」へ歌いに行こう、という訳である。

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これを買った理由はもちろんソテジワアイドゥルが載っていたから!
『渤海を夢見て』『ナンアラヨ』の2曲で、おかげで今でもカラオケでたまに歌います。笑
 
今ではネット上でもっとたくさんの曲をカタカナ&対訳付きで載せてくれている方がいっぱいいたりしますが、この頃にこれだけの曲が載った本が日本で出るなんて、ファンの方はさぞかしありがたかった事でしょう。
 
ノレバンへ行こう―KOREAN POPSの現在〈1996年版〉

ノレバンへ行こう―KOREAN POPSの現在〈1996年版〉